実用新案の活用

●実用新案とは

 実用新案は、「物品の形状、構造又は組合せ」を対象とした技術を保護する権利です。特許とは異なり、プログラムや方法等は対象とはなりません。
 実用新案は、審査が必要な特許と異なり、出願すれば無審査で権利を取得することができます。
 権利の存続期間は、出願から10年です。

●利点

 実用新案は無審査で権利の取得ができるので、特許と比較して以下の利点があります。

  • 権利取得までの費用が安い。
  • 登録の時期が早い(出願後約3ヶ月)。
  • 公開の時期が早い(出願後約3ヶ月)。
  • 出願のみで登録番号が取得できる。

●活用 その1 (権利行使)

 実用新案は無審査で登録されるため、権利行使をする場合には、技術評価書を提示して警告する必要があります。
 技術評価書は、特許庁への申請により、審査官が新規性や進歩性等に関して評価を行って、権利の有効性を判断したものです。
 技術評価書により権利が有効であると判断された場合には、特許と同様に権利行使が可能となります。
 しかし、無審査で登録されることから、権利として有効となりにくい技術の出願に利用されることが多く、権利行使に至ることはあまりないように思われます。
 そこで、実際には、「活用その2」以下の利用方法が主体となると考えられます。

●活用 その2 (牽制)

 実用新案は無審査で登録される性質上、権利として有効とはならない技術でも登録することができます。
 しかし、優れているとは思えない技術であっても、有効な権利か否かは技術評価書等によって判断されるまでは、どちらともいえない状態にあります。
 仮に、実用新案の技術が大したことがなさそうだからと真似した場合、万が一その権利の有効性が認められたとすれば、権利侵害が成立するおそれがあります。
 つまり、無審査といえども有効性の有無が判断されるまでは白とも黒ともいえないため、迂闊に真似してしまうは危険だといえます。
 そこで、実用新案権を取得しておくことで、出願から10年間は白黒つかない状態を維持することが可能となります。このグレーな状態を維持し続ければ、それだけ同業者は真似しにくくなるので、同業者の類似品の販売や権利取得等への牽制となると考えられます。
 これが特許の場合だと、出願から3年以内に審査請求をしなかったり、審査請求をして拒絶査定となったりすると、その出願の権利化ができないことが確定するので、実用新案よりも牽制できる期間が短くなってしまいます。
 権利行使までは望まないながらも、権利化を図ったり同業者に権利を取られたくない技術があった場合等には、特許よりも実用新案が有効であると考えられます。

●活用 その3 (早期の権利化)

 例えば、すぐに販売したい商品や、製品ライフサイクルが短い商品等の権利化を図る場合、権利化までに時間がかかり、存続期間が長い特許では、販売時期に権利化が間に合わなかったり、販売終了により長期間の権利を必要としない等、権利化の労力、費用、時間等に見合うメリットが得られないことがあります。
 しかし、実用新案であれば、出願から数ヶ月で登録され、存続期間が10年で費用も特許に比べて大幅に抑えられるので、すぐに販売する予定の商品や、製品ライフサイクルが短い商品にも対応できます。

 このように、短期的な商品等を低コストで保護する場合等に、実用新案は有効な手段となり得ます。